トレーニング中に肘が痛くなる。筋トレを続けたいのに、フォームを変えても負荷を下げても痛みが消えない。「鍛えたい気持ちはあるのに、このまま続けていいのか…」と迷いながらトレーニングを続けている方は少なくありません。
肘の痛みは外側か内側か裏側かで原因が全く異なります。「なんとなく肘が痛い」と曖昧なまま放置すると、症状が悪化して日常生活にも支障をきたす可能性があります。実際に私がこれまで見てきた中でも、痛みの部位を勘違いして対処法を間違え、かえって長引かせてしまったケースがありました。
この記事では、理学療法士の視点から痛む部位別に原因を判別する方法と、今すぐできる対処法、そして受診の目安を解説します。自分の症状を正確に把握し、適切に対処することで、トレーニングを安全に続けられる状態へと改善していきましょう。
この記事でわかること
- 肘の痛みを部位(外側・内側・肘頭)から判別する方法
- 痛みを引き起こしやすい筋トレ種目と動作パターン
- 肘の痛みを感じたときの正しい対処法(今すぐできる)
- 受診すべきタイミングと症状の見極め方
- 肘の痛みを予防するフォームと負荷設定のポイント
筋トレで肘が痛む主な原因【部位別に判別する】

肘が痛いって言っても、場所によって違うんですか?どこが痛むかで何が分かるんでしょうか。



はい、痛む部位で原因がかなり絞り込めます。肘の外側・内側・裏側で負担のかかる組織が違うので、まず痛む場所を確認しましょう。
筋トレで肘が痛むとき、痛む場所によって原因はほぼ決まってきます。肘の外側・内側・裏側それぞれで負担のかかる組織が異なるため、まずは自分の痛みがどこに出ているかを正確に把握することが大切です。
肘の外側が痛む場合:上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の可能性
肘の外側、特に骨の出っ張りあたりが痛む場合は上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の可能性が高いです。これは手首を伸ばす筋肉(短橈側手根伸筋など)の腱が付着部で炎症を起こしている状態を指します。日本整形外科学会によると、使い過ぎや加齢による腱の変性が主な原因とされています。
筋トレでは、手首を反らせたまま行うダンベルカールやトライセプスエクステンションで負荷がかかりやすく、前腕伸筋群が繰り返し収縮することで腱に微細な損傷が蓄積します。物を持ち上げる動作やドアノブを回す動作で痛みが出るのが特徴で、安静時にはあまり痛まないこともあります。
フォームを見させてもらうと、手首を反らせたままダンベルカールを続けている方が多いです。本人は気づかないうちに、毎回のトレーニングで前腕伸筋群に過度な負担をかけています。
数週間そのまま続けた結果、肘の外側に慢性的な痛みを訴えるようになるケースを何度も見てきました。
まずは手首が反らないようニュートラルポジションを保つことが最優先です。痛みが強い場合は該当種目を一時中止し、前腕のストレッチから始めてみましょう。


肘の内側が痛む場合:上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)の可能性
肘の内側が痛む場合、上腕骨内側上顆炎(通称ゴルフ肘)の可能性があります。これは手首を曲げる前腕屈筋群の腱が、肘の内側の骨(内側上顆)に付着する部分で炎症や微細損傷を起こす状態です。筋トレではアームカールやラットプルダウンなど、手首を曲げながら引く動作で負荷がかかりやすく、高重量を扱うほど腱への負担が増します。
日本整形外科学会によると、手首を曲げる筋肉の使い過ぎや加齢による腱の変性が主な原因とされています。痛みは肘の内側から前腕にかけて広がり、物を持ち上げる・ドアノブを回すといった日常動作でも痛みが出るのが特徴です。トレーニング中に内側だけがズキズキ痛む・翌日以降も痛みが引かない場合は、ゴルフ肘を疑って早めに対処しましょう。
実際にトレーニングで起こりやすいのは、バーベルカールの最後まで手首を巻き込むように力を入れてしまうパターンです。手首と肘が一直線を保てず、前腕屈筋群だけに負担が集中すると、内側上顆への引っ張りストレスが繰り返されて炎症につながります。


肘全体・関節内部が痛む場合:変形性肘関節症や滑液包炎
肘全体がズキズキ痛む、あるいは関節内部が腫れぼったく感じる場合は、変形性肘関節症や滑液包炎の可能性を疑う必要があります。変形性肘関節症は、野球やバレーボールなど肘を繰り返し伸展させるスポーツ歴がある人に多く見られ、関節軟骨がすり減って骨同士がぶつかることで炎症と痛みが生じます。日本整形外科学会によれば、肘の動きが制限される(完全に伸ばせない・曲がらない)症状も特徴的です。
滑液包炎は、肘の後ろ側にある滑液包(関節を保護するクッション)に炎症が起きた状態で、プッシュアップやディップスなど肘を繰り返し曲げ伸ばしする種目で発症しやすくなります。腫れや熱感を伴うことが多く、放置すると炎症が慢性化するため注意が必要です。いずれも筋トレの継続は避け、整形外科で画像診断を受けましょう。


痛みを引き起こす筋トレ種目と動作パターン



ベンチプレスやアームカールで肘が痛むんですけど、種目を変えれば治りますか?



種目そのものより、動作の仕方が原因のことが多いです。同じ種目でもフォームを変えると痛みが出なくなるケースをよく見ます。
肘の痛みは特定の種目だけでなく、動作パターン(関節の使い方・負荷のかけ方)によって引き起こされます。ここでは代表的な種目ごとに、どんな動きが肘を痛めやすいのかを整理していきます。
ベンチプレス・プッシュアップで肘が痛む理由
ベンチプレスやプッシュアップで肘が痛む原因は、肘関節にかかる過度な伸展ストレスと手首の代償動作にあります。胸のトレーニングでは、肘を深く曲げた状態から伸ばす動作(求心性収縮)を繰り返すため、肘の外側にある短橈側手根伸筋などの前腕伸筋群に継続的な緊張が生じます。これが上腕骨外側上顆炎、いわゆるテニス肘の発症リスクを高めるのです。
特に手首が反った状態でバーベルを握ると、前腕の筋群がさらに過緊張し、肘の腱への負担が増大します。実際にフォームを見させてもらうと、手幅が広すぎたり、肘を完全に伸ばし切る動作を繰り返している方が多いのですが、これが痛みの直接的な引き金になっています。
まずは肘を伸ばし切らないようにし、手首を真っすぐに保つ意識を持ちましょう。


アームカール・懸垂で肘が痛む理由
アームカールや懸垂で肘が痛む場合、痛む場所によって原因が異なります。肘の外側が痛むなら上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、内側が痛むなら上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)の可能性が高いといえます。
アームカールでは、前腕の回内・回外(手のひらを内外に捻る動き)が過度に入ると腱に負担がかかります。特にEZバーで行う場合、握る角度によって前腕の筋肉に不自然なストレスが集中し、肘の腱付着部に炎症を起こすことがあります。バーを握ったまま手首を固定しすぎると、遠心性収縮(筋肉が伸びながら力を発揮する局面)での負荷が肘に集中しやすくなります。


懸垂では、肘を完全に伸ばした状態から引き始める動作で、上腕二頭筋腱や前腕屈筋群に急激な張力がかかります。
痛みを感じたら重量や回数を減らし、フォームを見直すことが最優先です。
手首の角度・グリップ幅が肘に与える影響
手首の角度が過度に背屈(反る)あるいは掌屈(曲がる)した状態でプレス系やカール系の種目を行うと、前腕の屈筋・伸筋群に過剰な負荷が集中します。これが肘の外側(外側上顆)や内側(内側上顆)への付着部でストレスを生み、テニス肘・ゴルフ肘を引き起こします。ベンチプレスで手首が過度に反ったまま高重量を扱うと、手首から前腕の筋肉を経由して肘外側へ強い張力が働き続けるためです。


グリップ幅も同様に肘への負担を左右します。ベンチプレスで肩幅より極端に広いワイドグリップは肩関節外旋が強まり、前腕回内筋に代償的な負担がかかって肘内側を痛めやすくなります。逆にナローグリップで極端に狭くすると、手首の掌屈を強いて肘外側の伸筋腱へストレスが集中します。バーベルカールで手幅を広げすぎた場合も、前腕回外筋が過剰収縮して肘外側に痛みが出るパターンが多く見られます。
肘の痛みを感じたときの正しい対処法【今すぐできる】



肘が痛み出したら、すぐにトレーニングを止めたほうがいいんでしょうか?それとも続けても大丈夫なんですか?



痛みの種類によって判断が変わります。「炎症性の痛み」なら即休止、「筋肉痛に近い違和感」なら負荷調整で続けられることもあります。
筋トレで肘に痛みを感じたとき、多くの人が「我慢して続けるべきか、すぐ中止すべきか」で迷います。経験上、この判断を誤ると回復が長引くケースが非常に多い。ここでは痛みのタイプ別に、今すぐ取るべき対処法を具体的に示します。
痛みが出た直後の応急処置(RICE処置)
トレーニング中に肘に痛みを感じたら、その場で運動を中断してください。痛みを押して続けると、筋腱の損傷が進行し回復に数週間〜数か月かかるケースもあります。
応急処置としてRICE処置を行いましょう。Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の4つの頭文字です。痛みが出た直後は炎症を抑えることが最優先。氷嚢や保冷剤をタオルで包み、肘の外側・内側の痛む箇所を15〜20分間冷やします。
冷却後は軽く圧迫固定し、肘を心臓より高い位置に保つと腫れを抑えられます。痛みが引いたからといってすぐ再開せず、最低でも2〜3日は肘に負担をかける種目を避けてください。この段階で適切な処置をすれば、軽度の炎症なら1週間以内に改善することが多いでしょう。
トレーニングを続けるべきか・中止すべきかの判断基準
肘に違和感を覚えた時点で、まず痛みのレベルを確認してください。日常動作で痛みを感じない程度なら、トレーニング強度を下げて様子を見ることができます。逆に、物を持つだけで鋭い痛みが走る場合は一旦中止すべきです。
次に動作中の痛みのタイミングを見極めましょう。運動開始時だけ痛んで徐々に落ち着くなら、ウォームアップ不足や腱の硬さが原因かもしれません。反対に、セット後半になるほど痛みが増す場合は筋疲労による代償動作が原因の可能性が高く、これ以上の負荷は避けるべきです。
実際にトレーニングで起こりやすいのは「最初だけ痛い」と無理を続けてしまうケースです。痛みが続く時点で、フォーム修正か負荷の見直しが必要なサインだと考えてください。
痛みが2日以上持続する、または痛む範囲が広がっている場合は専門家への相談を検討しましょう。Lawtonら(2011年)の研究では、筋疲労の蓄積が代償動作を引き起こし、肘への負担を増大させることが示されています。無理な継続は回復を長引かせるだけです。
痛みを和らげるストレッチとセルフケア
痛みが出たら、すぐに動作を中止して休むことが最優先です。無理に続けると炎症が悪化し、回復まで数週間から数か月かかることもあります。急性期(痛めて48時間以内)は炎症を抑えるため、アイシングを15〜20分×1日3〜4回行うと効果的です。
炎症が落ち着いたら、前腕の筋肉を緩めるストレッチを始めましょう。肘を伸ばしたまま、手のひらを下に向けて反対の手で指先を体側へ引くと、前腕伸筋群(肘の外側につながる筋肉)が伸びます。逆に手のひらを上に向けて引くと、前腕屈筋群(肘の内側)が伸びます。各20〜30秒キープし、痛みが出ない範囲で1日2〜3回行ってください。
回復期には、500mlペットボトルを持って手首を上下にゆっくり動かす軽い負荷運動も効果的です。急がず段階的に動作を再開しましょう。


肘の痛みを予防するための正しいフォームと注意点
痛みの原因がわかったら、次は再発を防ぐための具体策です。ここでは代表的な筋トレ種目ごとに、肘を痛めないフォームのポイントと、実際のトレーニングで意識すべき注意点を解説します。
肘に負担をかけない手首・グリップの使い方
筋トレ中の肘の痛みは、手首の使い方ひとつで大きく変わります。
手首が過度に反ったり曲がったりした状態で負荷をかけると、前腕の筋肉が過緊張し、その張力が肘の腱に集中してしまうからです。
バーベルカールやベンチプレスなどプッシュ系・プル系を問わず、手首はニュートラル(前腕の延長線上)を保つことが基本です。
よくある質問(FAQ)
初心者からよく寄せられる疑問にお答えします。
まとめ
筋トレで肘が痛む原因は、痛む部位と動作パターンから判別できます。 内側・外側・肘頭・前側のどこが痛むかで原因が異なり、それぞれに対処法があるのです。
- 肘の内側が痛む場合は上腕二頭筋の過負荷、外側は前腕伸筋群の使いすぎが主な原因
- 肘頭の痛みはディップスやプッシュ系種目での過伸展、前側は伸ばす動作での負担が要因
- プレス系種目では肘の開きすぎと過伸展、カール系種目では手首の角度と反動が痛みを招く
- 痛みを感じたら、まず該当種目を休止して安静を優先。痛む動作は完全に避ける
- アイシングは受傷直後(48時間以内)のみ。慢性痛には温めとストレッチが有効
- 予防にはフォームの見直し、適切な重量設定、ウォーミングアップとクールダウンの徹底が欠かせない
まずは今日から、いつもの種目で肘の位置と可動域を意識してみてください。痛みが出たら無理せず1週間は休息を取り、その間に原因となる動作パターンを振り返りましょう。フォームを修正してから段階的に負荷を戻していけば、肘を痛めずに長くトレーニングを続けられます。
正しい知識とフォームで、安全なトレーニング習慣を。
参考文献
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- Strength testing and training of rowers: a review. (Sports Med, 2011, Lawton TW, Cronin JB) / URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21510717/
- 日本整形外科学会「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」 (joa.or.jp)
- 日本整形外科学会「変形性肘関節症」 (joa.or.jp)
- 日本整形外科学会「ロコモを知ろう」 (locomo-joa.jp)
- Inagaki, F., & Shiba, N. (2021). A Case Study of Bilateral Lateral Humeral Epicondylitis in Which Pain Catastrophizing and Depressive Tendencies Were Improved by Stretching the Pectoralis Major. 理学療法科学, 36(5), 743-746. (researchgate.net)
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