広背筋は、一般的には「背中の筋肉」の代表として注目されており、筋トレ業界ではいわゆる「逆三角形」を形成する筋肉です。肩の動きや体幹の安定性、さまざまな運動に関与しています。
広背筋はジムにある器具はもちろん、自重トレーニングでも工夫をすることで鍛えることが可能です。しかし、初心者には鍛えるメリットや方法がわからない方も多いと思います。

本記事では、広背筋について解剖学をはじめ、鍛えるメリットやトレーニング方法について、私が実践していることも交えてご紹介します。
正しい広背筋の鍛え方を知ることで、怪我をせずに効率よく逆三角形を手に入れたい人は必見です。
一般的な認識

日常生活では、物を引きあげたり引く動作に関与しています。
広背筋は筋力促通・強化することで、上半身の総合的な筋力の増強や姿勢の改善、健康的な身体の維持に役立ちます。
また、呼吸補助筋として呼吸動作に関与しており、深い呼吸をする際に胸郭の拡張を支えています。
面積は人体で最大だが、筋体積の大きさランキングでは8位と、見た目は大きく見えても意外と体積が小さくコンパクトな筋肉でもあります。
広背筋の弱化は、重いものを引き上げる動作が大変になったり、肩甲骨が挙上してしまい猫背を助長している可能性があります。
反対に、広背筋の筋緊張が常に高い状態が続くと肩甲骨の動きが固くなったり、無意識に腕が内側へ巻き込みやすくなるためバンザイの動作で肩関節を傷める可能性があります。(肩関節内旋位で肩関節屈曲をすると肩関節において構造上、インピンジメントが発生するリスクが高いです。)
また、広背筋が固くなると肋骨の動きが固くなるため呼吸が浅くなる可能性もあります。
なので、肩甲骨を動かす体操やストレッチ、軽いトレーニングを行うことで筋発揮の促通や筋肉と腱にストレッチをかけることが大事になります。
スポーツ選手にも特徴的な発達がみられます

特にプロボクサーや水泳選手、柔道選手、弓道選手などは広背筋が発達しており、腰から脇にかけての逆三角形が特徴的です。
具体的な動作としては、水泳で水をかく、ボクサーの腕を引く、柔道で相手を引きつける、弓矢を引く動作などが当てはまります。
広背筋は引く動作や体を捻る動作などの運動に深く関わっています。
鍛えることで、これらの動作がスムーズになり、スポーツパフォーマンスを向上させることができます。
筋トレにおいての認識

筋トレでは逆三角形の背中と広い肩幅を作るために広背筋トレーニングは欠かせません。
ここから、広背筋について解剖学やトレーニングメニューをご紹介します。
広背筋の正しい鍛え方を知ることで、逆三角形の身体を怪我無く作りましょう。
筋肉図
次の図は両側の広背筋です。

赤く映った筋肉が筋線維と腱部の走行を表現、青色が範囲をわかりやすく着色しています
起始
起始は背面の広範囲に付着しています。

背側から見た図
〇第6、7胸椎から第5腰椎の棘突起
〇肩甲骨の下角
〇第9、10~12肋骨
〇腸骨稜
〇正中仙骨稜
停止
上腕骨上部の青い部分で腱が捻じれて付着しているのが下記の図で分かりますね。

腹側から見た図
〇上腕骨の小結節稜
支配神経
胸背神経(C6~C8)
筋線維
広背筋の筋繊維は、広範囲にわたって斜めに走っており、肩関節の引く動作や内側へ捻じる動きで重要な役割を果たします。
主な働き
〇肩関節の伸展、内転、内旋、水平外転
〇肩甲骨の下制

左の図は腹側の右側45°から見ています。
広背筋による肩関節伸展動作により上腕骨が後方へ移動しているのがわかります。
実践して効いた!トレーニング項目
私が実践して効いた種目は下記になります。
自重を始めとし、懸垂器具やダンベル、バーベルを使用した方法についてご紹介していきます。
自重
〇スーパーマン
〇スーパーマンサイドプル
〇チンニング(懸垂)
マシン
〇ラットプルダウン
ダンベル
〇ワンハンドロウ
バーベル
〇デッドリフト
〇ベントオーバーロウ
〇シーテッドロウ
各トレーニング方法 姿勢やポイントについて

各トレーニング方法について、実践して効いたものを私の意見を織り交ぜつつご紹介いきます。
スーパーマン

スーパーマンは、まるで空を飛んでいるかのような手足を浮かせた姿勢をつくることで、広背筋を含めた背筋全体を鍛えられるトレーニングです。
背中の引き締めはもちろん、足も太ももから少し浮かせることによってヒップアップにも効果的です。
猫背が癖になり巻き肩になっている人の姿勢改善にも効果的です!
姿勢:うつ伏せ
①うつ伏せになり、両腕を頭上に伸ばして手のひらを下に向ける
②手足は肩幅より拳1つ分広めに開く
③両手と両足を前後に伸ばしたまま、ゆっくりと両手と両足を上方へ引き上げて3秒キープ
④ゆっくりと床につく寸前のところまで手足を下げて1秒キープ
⑤再び③~④を繰り返す(目安は10回を2~3セット)

怪我をしないコツは腰を反らしすぎないこと!反ると骨盤前傾が強くなり、続くことで腰痛を招きます。
強度を上げるコツは肩甲骨を下制(お尻側へ下げる)しつつお尻の穴を締め上げるイメージをするとGOODです!
スーパーマンサイドプル
先に挙げたスーパーマンの応用です。
下にまめたまの筋トレ日記さんがご紹介されている動画がわかりやすいと思うので載せておきます。
姿勢:うつ伏せ
〇両肘を腰に向けて引いていきます。
胸を床へ突き出して張りつつ、肩甲骨を内側に寄せてあげるとGOOD!

動画では両手を一緒に引いていますが、私は片側を連続または片側ずつ交互に繰り返すことでより高強度な刺激を与える工夫もしていました。
この他にも動画内で良いトレーニング方法がたくさん紹介されているので、ご興味のある人はぜひご覧ください!
チンニング(懸垂)

チンニングは、自重トレーニングの代表格であり、背中や腕の筋肉を効果的に鍛えることができます。
上半身全体をバランス良く鍛えられ、背中の筋肉を総合的に鍛えるので姿勢改善や基礎代謝UPを狙えます。また、ジムや懸垂バーだけでなく、公園などぶら下がれる場所があればどこでも行えるのが一番の魅力です。
姿勢:立位(ぶら下がる)
①肩幅より拳2~3個分開いて握る(体を持ち上げたときに肘が90°になる位置が理想)
ぶら下がった後の姿勢
②バーを握ってぶら下がったら肩甲骨を常に下制しておく。
③両膝を常に90°曲げておき、下腿を後ろでクロスして臀部に軽く力を入れておく(大殿筋との連動により広背筋の稼働率UP!)。詳しくはこちらで紹介しています。
体を持ち上げる
④肘を腰に引き寄せるイメージで脇を締めていく(腕を曲げる意識だと上腕二頭筋に負荷が逃げてしまい腕のトレーニングになってしまいます。
⑤肩の内旋(懸垂中に手のひらを胸の高さに近づけるイメージ)を意識しながら上がると、より広背筋に効いてる感じがわかります。
体を下ろす
⑥反動はつけず、ゆっくりと肘が伸び切らない高さまで下りる。
(目安は人それぞれ、その都度の限界回数で2~3セットが望ましいです。

こちらは広背筋を鍛える自重トレーニングの中で最も有効です!
初めは感覚が掴めず腕が疲れると思いますが、それが普通です。
日々繰り返すことで神経が発達し、約1週間で少しずつ脇に疲れを感じ始めて広背筋の収縮感がわかってきます。
もし懸垂器が無い場合は公園などぶら下がれる場所を探してみましょう。
ラットプルダウン

前方へ下ろす
ラットプルダウン
広背筋や大円筋(肩甲骨付近の筋肉)など、背中の筋肉全体をバランス良く鍛えることができます。

後方へ下ろす
ビハインドネックラットプルダウン
広背筋の上部や僧帽筋(首から背中にかけての筋肉)など、背中上部に重点的に刺激を与える方法
ラットプルダウンは、重量を上方から引いて広背筋を鍛えるマシンの代表的なトレーニングです。ジムに行くと必ずあるマシンで、ジムのインストラクターにトレーニングメニューを作成してもらうと、必ずと言っていいほど組み込まれています。正しいフォームでやらないと効果が半減してしまいます。
抑えるべきコツが多くて動きが難しく、正しいフォームでやらないと効果が半減してしまいます。
姿勢:座位(太ももを器具で固定)
手の位置
①肩幅より拳2つ分広げて、引いた時に肘関節が肩の高さで90°になる位置
握った姿勢
②手のひらで握るのではなく、指の始まる部分から小指を強く握る意識をすると腕の頑張りが減り、広背筋に収縮が入りやすくなります。
③肩がすくまないよう、肩甲骨を下げる意識を持つ。
バーを胸に引いてくる
④腕の力はなるべく抜いて、肘を脇腹につける意識で引く。
戻し方
⑤反動を使わずにゆっくりと正しいフォームで行い広背筋の伸張刺激を感じましょう。
反動は上級者が高重量をネガティブ動作で取り入れることが多いです。

腕や指が疲れてしまう方はパワーグリップやリストストラップを利用すると疲れが大きく軽減されるので、背中に集中しやすくなります!
また、バーを下ろす位置やグリップの握る幅で刺激を与える部位が変わるので、まずは一般的な胸に下ろす方法に挑戦してみましょう。
ワンハンドロウ

ワンハンドロウは、ダンベルを使って広背筋を鍛えるトレーニングです。
片手ずつ行う種目なので、片側の広背筋を特に集中して高重量を扱えるトレーニングとなります。筋力の左右差改善にもメリットがあるのでぜひ挑戦してみてください。
姿勢:ベンチに手と対側の膝を乗せた前傾姿勢
姿勢
①片手にダンベルを持ち、片膝をベンチに乗せます。
構え
②ダンベルを小指側を握りつつ腕を楽に伸ばし、背中を丸めないようにします。
床側からの引き上げ
③脇を締めつつ肘を後方へ引いてくる意識で曲げて、ダンベルをゆっくりと引き上げます。
戻しかた
④ダンベルをゆっくりと下ろして広背筋の伸張を感じましょう。
(左右交互に、目安は6~10回を2~3セット)

片手ずつ行う種目は特に狙いたい広背筋が収縮する感覚を掴むのに良いです!
体幹が不安定な姿勢なので腰を反らして痛めないように腹圧を高めて行いましょう。
腹圧は深呼吸で息を吐いた時の腹筋にかかった力をキープしつつ息を吸うことがコツです。
〇デッドリフト

デッドリフトは、バーベルを使って主に背中と脚全体を鍛えられる、BIG3と呼ばれる種目の一つです。筋トレの中でもスクワットと同様にトップレベルで高重量を扱えるので、主に背中や脚の筋トレですが、全身をくまなく鍛えられることが魅力です。
脚トレとしてスクワットとの違いは、太ももの裏に強烈な張力を加えられるので、太もも前側の大腿四頭筋よりは裏側のハムストリングスを鍛えるのに向いている点です。
姿勢:立位
準備
①バーベルを床orセーフティーバーなどで膝の高さに置き、足を肩幅~拳2つ分程開きます。
構え
②膝を曲げつつ、背中を絶対に丸めないようにバーベルを持ちます。
床側から持ち上げ
③腹圧をしっかりかけて、足裏で床を押すと同時に膝と股関節をゆっくり伸ばしながら、バーベルを持ち上げます。
戻しかた
④バーベルをゆっくりと下ろします。
(目安は6〜10回を2〜3セット行います。)

初めは必ずバーのみで準備運動から始め、徐々に荷重していきましょう。
怪我が最も多い種目だと思います。私は記録更新を急いでしまったため腰痛になり3か月以上、未だに痛みを引きずっています。。。(笑)
正しいフォームを身につけることで怪我を予防しましょう!
腰を守るためにベルトやサポーターの利用、高重量を扱う場合は腕や指が先に疲れてしまうので、パワーグリップやリストストラップを利用すると疲れが大きく軽減できます。
〇ベントオーバーロウ

ベントオーバーロウは、バーベルを下方から引いて広背筋を鍛えるトレーニングです。
広背筋、僧帽筋、脊柱起立筋など、背中を全体的にバランス良く鍛えられます。 また、姿勢改善や背中全体を鍛えることで基礎代謝UPに貢献し太りにくい体づくりに良いです。
姿勢:立位(体幹 約10°前傾位)
準備
①バーベルを肩幅か拳1つ分広く持ち、足を肩幅程度に開きます。
構え
②膝を軽く曲げて体幹を約10度前傾させます。背中を丸めないように股関節から曲げましょうしましょう。
床側からの引き上げ
③肘を曲げてバーベルをゆっくりと引き上げます。肩甲骨を下げつつ寄せる意識で行うと効果的です。
戻しかた
④バーベルを肘が伸び切らない高さまでゆっくりと下ろして③~④を繰り返します。
(目安は6〜10回を2〜3セット)

まずは感覚を掴むためにバーだけで練習し、徐々に高重量に挑戦してみましょう。
重量が重すぎると腰を反らすことで腰椎に強い負荷がかかり腰痛になる可能性があるため無理のない範囲で行いましょう。
シーテッドロウ
シーテッドロウは、マシンを使って重量を水平に引いて背中を鍛えるトレーニングです。
主に広背筋、僧帽筋の中部~下部を鍛える時に最適です。座った姿勢で動作するので他の種目と比べて腰への負担が少ないことが利点です。背中周りの引き締めや背中全体を使うので基礎代謝UPも狙えます。
姿勢:座位
準備
①マシンに座り、足をフットレストに乗せる。
構え
バーまたはハンドルを握り、背筋を伸ばして肩甲骨を下制する。
動作
脇を締めて肘を曲げながら、バーまたはハンドルをゆっくりと引き寄せます。肩甲骨を内側へ寄せる意識で行うと効果的です。
戻し方
バーまたはハンドルを元の位置にゆっくりと戻します。
(目安は6〜10回を2〜3セット行います。)

僧帽筋の中部と下部を鍛えることで背中の立体的な厚みをつけるのに有効です。
戻す時に肩甲骨を内側に寄せたままゆっくりと行うと広背筋に強い伸張を感じられます。
まとめ
広背筋は物を引き付ける動作に強く関与しており、
腕の動き以外にも体幹の保持や呼吸に関わっている重要な筋肉です。
鍛え分ける場合は上方・水平・下方から引く種目に分けることでを効率よく様々な刺激を入れることができます。
ぜひ本記事を参考にして、皆さんも一緒に広背筋を効率的に鍛えて隆々とした背中を手に入れましょう!
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